捻くれ肴

2001年8月12日生まれ 女性

味覚

 感情が味覚に直結する──それはまるで、自分の心の動きが口の中で再現されているかのような、不思議な感覚だ。

 

 熱が出ると、その体温の上昇だけではなく、口内にじわじわと広がる微妙な苦味が感じられる。それは辛いものを食べたときの外からの刺激とは異なり、内側から静かに、しかし確実に広がる苦味だ。これが「熱の味」だと私は呼んでいる。

 

 嬉しいことがあると、ふと感じるその味は、硬水のようにしっかりとした爽やかさを持っている。それは軽やかでありながらも確かな存在感があり、まるでその感情が舌の上に重なっているかのように感じる。

 

 一方で、嫌なことがあると、その味は渋く、雨水を口に含んだような、何とも言えない苦い味わいが広がる。この味が感じられるたびに、嫌悪感がじわじわと身体全体に染み渡り、感情の波が味覚を通して身体を支配していることを実感する。

 

 感情の起伏があるたびに、これらの味覚の変化を感じることが、私にとっては自己認識の一部となっている。喜びの味、悲しみの味、そして怒りの味。それらが交錯し、絡み合い、時には私を混乱させることもあるが、同時にその味覚を頼りに自分の感情を理解し、そのまま身を任せることも少なくない。

 

 この感覚が私の日常にどれほどの影響を与えているのかを考えると、感情というものがただの心の動きにとどまらず、物理的な体験としても存在していることを再認識する。そして、感情の味を感じながら生きることで、実体がないはずの感覚が、現実として私に突きつけられる。

 

 「人生を味わう」という言葉が、単なる比喩ではなく、実際に舌の上で感じるものだと気づいたとき、これから先、どんな味が私を待っているのか、少しだけ楽しみになる。その味がどんなものであれ、それは私の一部として生き続けるのだから。